花粉症と宇宙開発(中編)

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前編からお読みください)

宇宙で人間が活動するためのコストは、その大部分が地上から宇宙へモノを運び上げるためにかかっている。宇宙開発はすべて地上からロケットで打ち上げた資材を使って行われており、その打ち上げには通常1回あたり数十億円から百億円以上の費用がかかる。今の製造業を代替する規模の工場を宇宙空間で運営しようとしたら、資材の打ち上げだけでも天文学的な費用が必要となり、とても現実的ではない。

――と、思われるかもしれない。

ここで軌道エレベータの話が出てくると思ったあなたとは、きっとうまい酒が飲めそうだ。しかしここではその話はしない。そもそも宇宙工場を運営するのに、「地球から資材を運び上げる」ことは必須ではないのだ。

宇宙には、製造業を回していくのに必要なものがほとんどそろっている。豊富な太陽エネルギーがあるし、月面や小惑星に行けば水や金属資源もある。水を分解すれば酸素も作れるし、水素、酸素、炭素があれば有機物(高分子ポリマーや炭化水素系燃料など)も作れる。


小惑星などという遠いところまで行くのにコストがかかるだろうと思われるかもしれないが、宇宙では距離の大小は輸送のためのエネルギーの大小にほとんど影響しない。加減速なしの一定速度で飛ぶ限りエネルギー消費はゼロなので、10倍の距離を運ぶためには10倍の時間をかければ良いだけだ。むしろコストに影響するのは小惑星軌道と地球軌道の間の速度差なのだが、これもイオンエンジンやソーラーセイルなどを使って数年がかりで緩やかに加速(減速)してやればよい。

小惑星で採掘した物資を無人のコンテナに入れて次々に送り出すと、コンテナは数年かけて地球近くまに到着する。(何なら地球到着は数十年後でも構わない。いま仕込んで回収が数十年後というのは、ちょうど林業でやっていることと同じだ。) 地球の表面(海)で貨物船やタンカーを無人航行させるのは難しいが、宇宙空間には複雑な地形も海流も台風もない。小惑星から無人機が物資を持ってこられることは、すでに日本の「はやぶさ」が証明している。そういった資源を採掘し、原材料やエネルギーを取り出すエコシステムがいったん回り出せば、わざわざ地球から物資を運ばなくても宇宙資源だけで製造業は自活できるようになる。


そのようなシステムが実現する可能性がどのくらいあるのかはわからない。現実には非常に困難で、可能性は低いかもしれない。しかし万一それが実現した場合には、驚くべき逆転現象が起こるだろう。地上の工場で作った製品を船や飛行機で世界中に運ぶより、衛星軌道上の工場で作った製品を地球に「荷下ろし」する方がはるかにコストが安くなるのだ。

後編へ続く)

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このページは、Kato Keiskeが2012年1月22日 22:45に書いたブログ記事です。

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